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ラウル・アラキ
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全米日系人博物館


ラウル・アラキ氏は、日系ペルー人三世で、ペルーのポンティフィシア・カトリック大学において人類学を専攻。氏はペルーへの移民問題と日本人を先祖に持つペルー人に関する多くの研究プロジェクトに携わってきた。1989年には、アメリア・モリモト教授と協力、日本人を子孫に持つペルー人の社会的・経済的適応状況に関する全国的アンケート調査を行った。氏の最新の研究対象は、1997年のペルー日本大使館の人質事件である。

e-mail: musinjap@apjp.org.pe

研究テーマ:
「ペルーにおける日系アイデンティティ形成過程に関する考察」

ラウル・アラキ氏は、ペルーにおける日系人の文化とアイデンティティに関して研究する予定である。過去20年間、トラジ・イリエとアメリア・モリモトの研究に代表されるように、人口統計学、統計学と歴史の分野において、重要な進歩が見られたが、文化とアイデンティティ研究の分野では、まだそれほどの進展がみられていない。今日の日系人は、ペルーの都会の文化と混合した文化を形成していて、自らを独自の集団とみなし、また社会からも独自な集団とみなされている。この概念は、日系人がまわりの社会と交流を続け、アルベルト・フジモリ氏の大統領選出にみられるように、国家政治にも積極的に関与してきたにもかかわらず、消え去ることがなかった。アラキ氏は、文化とアイデンティティの研究を次の三点に絞って研究する予定である。(1)日系コミュニティはペルーの歴史のなかで、どのように形成されてきたか、(2)ペルーの日系コミュニティはまわりの社会や日本人からどのようにみられてきたか、そして(3)日本人コミュニティと日本文化はペルーの歴史を通してどのように変容してきたか。



本論文は、ペルーにおける日系アイデンティティ形成過程という大変複雑な問題を取り扱う。本論文が目的とするのは、同過程に影響する要素、原因、条件等のある部分を指定することである。
アイデンティティというテーマ、この場合日系アイデンティティ、を取り扱うに際して忘れてはならないのは、アイデンティティ形成には、常に新しい経験や変化が伴うため、考察の結果は常に、部分的で一時的なものに過ぎないということである。この複雑さのため、他分野にわたって考察を行う事が、重要となる。
一見して単一の様にみえても、日系コミュニティには多様性が存在している。それゆえ、不十分な現状調査によって、分析を未完なものにしないように注意しなければならない。
第一に、共通のコミュニティとしての歴史的経験と、個人の経験という相互作用を及ぼす二重構造が存在する。
日本の文化遺産は引き継がれるが、それは地域によって、適応、文化混合、同化の点で異なるレベルのニュアンスが存在する。
そのうえ、ペルー人、ラテンアメリカ人としてのアイデンティティも形成過程に含まれる。それゆえ、それは考察過程にも含まれる必要がある。矛盾に満ちていながら、これらの要素は、活気に満ち、希望に満ちてもいる。
ペルーにおいては、様々な年代を含む5世代の日系人が存在する。
モリモト著「ペルーにおける日系人」によると、社会的・経済的違いが日系人の間に存在し、それが、日系コミュニティに所属するものと、所属しないものの差をより強調することになっている。
とはいえ日系ペルー人は、受け継いだ日本文化とその起源を誇りに思う気持ち、それから我々を特別な物にするペルーのスペイン文化到来以前の古代文化を大切にする気持ちで結ばれている。そのうえに、我々は、ペルーの様々な地域文化を我々の中に持っているのである。
この誇りは我々に自信を与え、部分的に我々のアイデンティティを説明する要素となる。また、ペルー日系人の教育レベルは比較的高い。中等・高等教育を受けたものは、日系人口の63.14%にのぼる。全く教育を受けていないのは、全体の0.39%に過ぎない。(モリモト、1991)。
本研究は、まだ実験段階であるが、主流社会の人々が日系人をどのように認識し、日系人に対しどのような固定観念を持っているかを観察してみたいとも思っている。
本研究では、日系アイデンティティとは、人々が、親近感を表現する際に用いる象徴的構成と定義される。その起源と共通の過去、その共通の価値観、習慣と慣例などによって規定されるが、同時に混合の価値観と文化を受け入れ、人種混合の環境で共存することを学び取る。
日系アイデンティティの形成は個人又は集団の意識的選択と無意識の側面を含む創造的過程である。(マルカス、1992)。
その選択とは、個人の多方面に及ぶ経験と、外的、内的時間とスペースに関連して世界観を共有する集団あるいは機関の合成されたものである。
同時に、それは、過去、現在の記憶を維持し、未来の希望と展望を維持するアイデンティティである。もし、楽しい思い出がアイデンティティの一部であるなら、それは保持されるべきである。我々は、我々を結び付ける根本的な要素を見出そうとする。そしてまた、どのように、個人のアイデンティティを集団のアイデンティティに統合する事が出来るかを見出そうとする。そしてまた、共通のプロジェクトを探し出そうとする。
本論文は、ペルーにおける日系人を取り扱ったものであり、彼等の経験をとおして、日系コミュニティとアイデンティティの形成過程を探求するものである。