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レイン・ヒラバヤシ
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全米日系人博物館


レイン・ヒラバヤシ氏は、コロラド大学ボールダー校のアジア系アメリカ人研究と民族学の教授である。氏は、メキシコの原住民に関する研究と、日系アメリカ人のさまざまな問題についての研究を専門とし、英語とスペイン語において、研究成果を出版している。
中でもカリフォルニア州・ガーディナの日系人にかんする研究は画期的なものである。また、第二次世界大戦中の合衆国強制収容所の日系人の体験に関する研究をまとめた「アメリカ強制収容所の内情:アリゾナ、ポストンの日系アメリカ人の抵抗」(Inside an American Concentration Camp: Japanese American Resistance at Poston, Arizona)を1995年に、「フィールド・ワークの政治学:アメリカ強制収容所での現地調査」(The Politics of Fieldwork: Research in an American Concentration Camp) を1999年に出版。

e-mail: lane.hirabayashi@colorado.edu

研究テーマ:
「日系人の政治力の向上:ガーディーナ、ハワイとペルーの比較研究」

ヒラバヤシ博士は、日系人の政治力の向上にかんする、統計的ならびに非統計的研究法を使って実験的比較研究を行うことを提案する。「政治力の向上」(=エンパワーメント)とは、本研究においては主に、選挙によって、民主国家の多党制度において、公式に政治職を獲得することを意味する。アジア人の政治的立場に関する研究は、研究者の自らの母国に関する枠を超えた比較研究はほとんど行われていないが、私の見解においては海外の日系人の政治的地位の向上に関するいくつかのすぐれた研究がおこなわれている。その中でもとくに優れた研究が3作あるが、それらの研究はまったく異なった分析レベルを採用している。その第一は、市レベルを用いての研究である。これは、1980年代のカリフォルニア州ガーディーナの研究が典型的である。その第二は、州レベルを用いての研究である。これは、第二次大戦後のハワイ特にオワフ島の研究が典型的である。その第三は、国家レベルを用いての研究である。これは、1990年代のペルーのフジモリ大統領に関する研究が典型的である。ヒラバヤシ氏は、多民族社会であるアメリカ・ラテン国家において、日系人が、いつ、どのように、どこで、なぜ、政治的地位を向上させることができるのかを理解するより優れた研究へと発展させるために、組織的な考察を行うことが、可能であると提案する。



本研究は、アメリカ大陸における日系人の政治影響力の向上に関する数量分析を用いない、比較研究を、実験的に行うことが目的である。「政治影響力の向上」とは、ここでは、おもに2大政党制あるいは多党制の民主国家で選挙によって、公職を獲得することを意味する。
本研究で使用する論理体系は、政治学者ピーター・K.アイシンガーによって開発されたものである。アイシンガーは、まず、人種政治伝統(Ethnic Political Tradition, EPT)現象をその研究の焦点として指定し、具体化し、次に、実証データに基づいて分析を行った結果、特定の人種が、EPTを確立するために通らなければならない3段階とその際現れる3種類の条件を指定した。その3条件とは以下に要約される。(A)経済的安定。これは、長期に渡る「集団ショック」の克服を含む。(B)同じ人種のために積極的に地位向上にむけて取り組む地域機関と指導者の形成と其の安定。(C)主流政党、政治体制への参入。アイシンガーの論理体系を使ってアメリカ大陸の日系人の政治影響力向上に関する比較分析を行う事が可能である。ただ、それには限界があって、修正を加える必要はあるが。
ミルの「間接差異法」が、ケース数の少ないアメリカ大陸の日系EPTの比較研究には、適切である。この様な方法には明らかに限界があるが、より緻密な方法を用いるには、さらに詳細なデータが必要である。
アイシンガーの論理体系にしたがって大まかな「テスト」を行うために、6つの要約ケース・スタディーを作為抽出した。3ケースは、肯定的結果例で、それぞれ市、州、及び国家レベルを代表している。(カリフォルニア州ガーディーナ、ハワイ、ブラジル)これに対して、肯定度の弱かった例、あるいは、否定的例としてあげられるのが、サンフランシスコ市、カリフォルニア州、とメキシコの三例である。すなわち、ミルの間接差異法にしたがって、この両端の結果を示す6ケースを集め、比較・対照する事によって、アイシンガーの論理体系と条件が本研究にとって適切であるかどうかを考察する。
研究の結果は次のとおりである。第一に、少なくとも、対象となった6例については、アイシンガーの論理体系を採用する前に、人口分布上の条件が整っていなければならない。その条件しだいで、3種類の「権力への道」が存在する。確認はまだ取れていないが、3種類とも日系人の「ETP」にとって重要であると思われる。
第一の道は、日系人口が20%またはそれを超える場合である。第二の道は、他人種間の連合・提携を必要とする場合である。これは、日系人口は多いものの、全人口に対する割合が低い場合である。第三の道は、日系人の政治家が、日系人口以外の政治基盤を確立する場合であるが、この件については、あきらかなことは、分かっていない。日系人政治家が、独立している場合もあるが、ある程度の日系人の協力・支持を得ている場合もあると思われる。
本論文の結論は、アメリカ大陸の日系人は、本来政治活動に興味を示さないというのは間違いである。実際は、「critical mass」(必要となる大衆動員の数)や、一定人口内に存在する他民族性等の様々な条件・環境が、日系人が公式の選挙の場で団結することを妨げている場合が多いのである。

1999年3月